【完全有機肥料「イセグリーン」による米栽培(太田保夫氏著)より抜粋】
イセグリーンによる脱化学肥料・減農薬の有機の郷づくり
でに、述べてきましたように、抗生物質を一切与えないで健康な鶏を育てることに成功した微生物群が、その完熟鶏糞イセグリーンを施用した水田でイネの根を健全化し、病気にかからない、倒れにくいごわごわと堅い茎葉と、素晴らしい稔りをもたらし、食味値が90を示す旨みのあるおいしい米を生産することがわかりました。
さて、これから消費者のニーズを踏まえて、第一段階として、イセグリーンによる安全でおいしい米作りを展開し、第二段階として、微生物利用の家畜清浄飼育システム(Bio Livestock Clean System)とリンクした環境保全型農業への産地形成をめざすこととします。
1.イセグリーンで安全でおいしい米作り
 日本の農業は、好むと好まざるに拘わらず、家畜の糞尿や生ゴミの完全リサイクルを前提に、有機農業への転換が余儀なくされています。 このイセグリーンは、まさにその先達として、循環型社会を作る環境に優しい農業を目指し、脱化学肥料・減農薬栽培にチャレンジし、防除暦でなく、IPMの基本概念を控えて、減農薬に努め消費者の望む旨くておいしい米つくりを展開します。
 a.お礼肥と秋耕
さて、イセグリーンによる栽培法について具体的に述べてみましょう。第一段は、お礼肥秋耕時のイセグリーンの施用です。近年省力の面からコンバイン収穫後の稲藁を焼却することが行われてきました。しかし、地力保全の立場から稲藁は必ず鋤き込んで、水田土壌の有機物を増すべきです。その際は、このイセグリーンをおよそ150kg/10a秋耕前に全面散布します。イセグリーンに含まれている微生物が働き水田土壌中の善玉菌を活性化します。稲藁の分解促進にも役立ちます。
この秋耕時のお礼肥は、主に地力の回復に役立ちます。なお、その2割ぐらいは翌年のイネの初期生育の促進に役立つことが期待されます。有機肥料は即効性の化学肥料と違って、ゆっくり効くので生育初期の生育停滞が懸念されます。秋のイセグリーンのお礼肥は、その欠陥を補うのです。さらに、病害虫や宿根性の雑草の防除面からも、秋耕は是非励行して欲しい農作業です。
 b. 元肥一発
従来の化学肥料を用いる慣行法では、長野県の55方式、東北地方での64方式、中国地方の46方式というように、元肥と追肥に分けて分施する方式がほとんどです。しかも追肥に重点を置いた施肥が一般です。しかし、有機農業では元肥一発が一般です。有機肥料はその効き方が緩慢で、とくに気温の低い田植え直後の生育の遅れが懸念されています。秋耕時に施すお礼肥は、稲株の分解と地力の増進がその目的ですが、と同時に田植え直後のイネの初期生育を促進するのに役立つ養分を供給する役割があるのです。
 元肥の一発施用は、できれば田植え10日〜2週間前に施すのが望ましいのですが、遅くとも田植え1週間前までには済ませたいものです。寒冷地でイセグリーンの施肥量が多いのは、田植え後の気温が低く、肥料の有効化が遅れることによります。一方、西南暖地で元肥施用量の少ないのは、気温の上昇に伴って、肥料分の有効化が急速に進み、初期から中期の過剰生育が懸念されるからです。
勿論この資料は一応の目安で、それぞれの地方で個々の水田の状態を見極めて独自に弾力的な対応が望まれます。地域や土壌条件によって施用量は当然ちがってきます。寒冷地は田植え直後の気温が低いので、有機肥料の有効化が遅れます。元肥はやや多めに施すことです。一方、暖地は気温も高く初期生育の過剰は、後期生育を衰退させますので、元肥量はやや少なめに施すのがよいでしょう。元肥の施用量は収量レベルによっても土壌の種類によっても加減します。 倒伏しやすい重粘土壌は少し施用量を抑えた方がよいでしょう。一方、養分の溶脱しやすい砂壌土では施用量を増やします。有機栽培では元肥一発で、地力によってイネを作ることになります。化学肥料の施肥法とイセグリーンによる有機栽培とでは発想の転換が求められるのです。 昔から旨い米は、少し瘠せた土地で生産されるといわれてきました。有名な米の産地新潟県魚沼地方も傾斜地に展開する排水のよい瘠せた土地です。生育の後期まで窒素の効いているイネは旨い米はできません
 . 苗半作
昔から苗半作とか苗7分作といって、苗素質のよしあしが、イネの収量にたいへん大きな影響を与えます。このイセグリーンによる有機栽培を成功させるには、初期生育を促進させる健苗育成が必須条件です。
それには、抗生物質を与えなくても健康に育つ鶏に与えた混合微生物バイオルートを育苗箱に与えるのです。勿論健苗育成効果のあるタチガレンと併用します。
具体的には培土1kg2gのタチガレン粉剤と1gのバイオルートを混和して、培養土を作ります。バイオルートの生成する植物ホルモンであるエチレンによって、出芽が促進され、またタチガレンのオーキシン共力作用とバイオルートのエチレン作用の働きで、幼根の伸長促進と、養分吸収を高める根毛の発達が著しく促進されるのです。その結果、健苗が育成され、本田での初期生育が順調に経過します。
対照区 バイオルート併用区
バイオルートの併用がイネにもたらす影響
バイオルートの併用が
イネにもたらす影響
. イネに三黄の季あり
イネ作りには、昔からいろいろな諺があります。「イネに三黄の季あり」といわれてきました。これはイネの一生には、3回葉が黄色くなるときがあるというのです。それは苗代末期、栄養生長期から生殖生長期への転換期(出穂一か月前)、収穫期の3回です。
 これらの時期葉色が落ちることの意味は、この時期は、生理的に大変重要な時期であり、外部環境の異常に適応するため、葉色を落とす必要があるというのです。この時期に葉色が濃い緑色をしていると、低温とか日照不足などの異常気象に思わぬ障害を受け、病害虫に犯されます。
 会社経営にたとえると、不況のとき放漫財政では破産します。引き締めて社内保留金を蓄えて不況に対応しなさいということなのです。しかし、好景気の味が忘れられず、どうしても過剰な投資に走るのが一般です。
イネ作りにも化学肥料が手軽に入手できる昨今は、好天候に恵まれて多収穫を得た時の思いもあり、過剰な施肥に流され、大切な三黄の季がなくなりかけています。そんなイネは病気や虫が多発生し、農薬を散布しても間に合いません。
 窒素肥料の追肥は、確かに収量を高めますが、米の品質は落ちるのです。玄米中の蛋白質と品質とは負の相関で、蛋白質含量の低いものが品質はよいのです。品質のよい米を得るためには、有機質肥料イセグリーンの元肥一発でゆっくり栄養分を効かすのがいいのです。
 e. おいしい米作り
いずれにしても、イセグリーン施用のイネの生育後期は根が健全で葉が直立し、株元に光がさしこみ、下葉の枯れ上がりも少なく、けい酸含量の高いゴワゴワの堅いイネに仕上がります。登熟が良く屑米の少ない高品質の米が生産されます。葉色の褪めが慣行田に比べて早く進んでいても、心配しないで追肥など打たないように心掛けましょう。化学肥料を散布しなくても、イセグリーンが植物ホルモンのエチレンを生成し続け、病気にかからない、倒れない、素晴らしい稔りを約束して呉れます。この時期は我慢が大切です。
2.イセグリーンで環境に優しい農業の産地形成
日本農業の根幹は、国民の主食である米作ですが、やがてイセグリーンによる米作りが、他作物へも普及し、脱化学肥料・減農薬の有機栽培の拡大する可能性が強く示唆されます。
 これからは、この運動を
BLCS(微生物利用の家畜清浄飼育システム)とリンクさせ、幅広い環境保全型農業へと発展させていきたいものです。
米以外の作物、リンゴ・ナシ・ブドウ・ミカンなどの果樹類、トマト・ナス・キュウリ・レタス・ブロッコリー・キャベツ・ニンジンなどの野菜類、ユリ・リンドウ・カーネーションなどの花卉類の栽培においても、根を健全にするイセグリーンは、素晴らしい品質の農作物を生産し、脱化学肥料・減農薬の循環型社会を形成する環境に優しい農業に発展することでしょう。

やがて、それぞれの地域に、完全有機肥料イセグリーンが起爆剤となって、独自の有機の郷が産まれ、環境に優しい農業の産地形成に発展することを願ってやみません。
VANTECH NIIGATA CO.,LTD.