【完全有機肥料「イセグリーン」による米栽培(太田保夫氏著)より抜粋】
完全有機肥料イセグリーンによる米の栽培と太田先生の出会い
今年(2003年)の8月下旬、私のところにBTNという会社の獣医師と新潟の農家が、慣行栽培のイネと完全有機肥料イセグリーンで作ったイネのサンプルを持ち込んできました。突然のことでしたが、私はそのイネをみて驚きました。イセグリーンという有機肥料で育てられたイネがたいへん素晴らしかったからです。
 根が非常に健全でよく分岐し、赤褐色の根で、黒化が全然見られないのです。葉は固くごわごわして、ピンと開いたままでした。下葉の枯れ上がりが少なく、穂が美しく健全そのものでした。全く理想的なイネの姿でした。
 一方、慣行栽培のイネは、根は黒化し、根ぐされを起こし、下葉は枯れ上がり、葉は軟らかく捲き、穂は長く着粒数は多い傾向でしたが、穂イモチがとんでいました

 伺ってみると、このイセグリーンという有機肥料は、イセファームという日本一の養鶏場で、10数年をかけて、抗生物質など抗菌物質を一切与えないで健康に育てることに成功した鶏の糞のみを原料として、3ヶ月完全発酵をさせた有機肥料だというのです。
私は異常な関心をもって注意深く、新潟県、福島県、宮城県3県のイセグリーンによるイネの栽培現地を9月〜10月にかけて見学させて頂きました。その結果は、ひとつの例外もなく、イネが全く同じ反応を示していたのです。
慣行田のイネの根が硫化水素によって、黒化して根ぐされしているのに、この完全有機肥料イセグリーンを与えたイネの根は、すべて黒化根がみられず健全だったのです。イネの根の専門家として自負している私が自分の目を疑いました。
何故だろうと、BTNの獣医師に尋ねると、平然として、このイセグリーンには硫化水素やアンモニアの生成を抑える微生物がいるのだというのです。この微生物の中には枯草細菌、乳酸菌、光合成細菌などが含まれ、ひたすら彼等が健康な鶏を抗生物質なしに健全に育てた努力が、実はイネの根の健全化に偶然符合していたのです。
化学肥料田 イセグリーン
有機田

化学肥料と完全有機肥料
イセグリーン施用イネの
比較
(茨城)

化学肥料田の稲の根
(茨城)
イセグリーン有機田の稲の根
(茨城)
これで私の疑問は解消しました。イセグリーンがイネの根を健全にし、茎や葉を固くし、穂が綺麗に実るのは、これらの微生物の働きでむしろ当然のことだったのです。この驚きの完全有機肥料イセグリーンの特質をまとめてみると次のとおりです。

まず、水田土壌中の微生物を活性化し、有用菌、硝化菌、光合成細菌などの働きが活発になります。次に、植物性プランクトンが発生し、植物プランクトンを捕食する動物性プランクトンも増えてきます。やがて、それらを餌にするトンボ・タニシ・カエル・クモなどの小さな生き物も増えてきます。
 
一方、光合成細菌の働きで、土壌が好気的になり、硫化水素の発生に関わる嫌気性菌を抑えます。アンモニアやヘドロの分解も促進します。このような土壌環境で有機物の分解が進み、植物ホルモンのエチレン生成が高まります。
 
イネの根はよく伸長し、分岐根の発生も促進され、硫化水素の障害も無く、黒化や根ぐされすることなく健全に生育します。また、土壌中の無機成分は微生物の生成する有機酸により無機成分は植物に吸収されやすい型に変わり、活力の高い健全な根によって活発に吸収されます。とくにイネを丈夫にするけい酸がたくさん吸収されます。
 
けい酸をたくさん吸収したイネは、ごわごわと堅く、葉は直立して、株元まで日光が射す理想的なイネの姿になります。その結果、丈夫で倒れにくく、下葉の枯れ上がりも少なく、病気に強いイネになり、穂の熟色のよい素晴らしい高品質の米を生産するのです。

1.イセグリーン施用区の稲の共通現象
@.稲
イセグリーン施用により湛水中の水田で硫化水素の発生が抑えられるので、根が酸化鉄による黒化が全くみられず、大変健全である。古い根も新しい根と同じように生理的活力が高い。
化学肥料施用区 イセグリーン施用区
完全有機肥料イセグリーンがイネの根の生育に及ぼす影響
A.茎と葉
葉の表面に触ってみると、ザラザラ感(ガラス質)が強く、けい酸含量の高いことを示唆している。
根に栄養を送る第4、5葉の枯れ上がりが遅く、根の健全なことと符号している。
化学肥料施用区に比べて葉と茎を掴んだ感覚が違う。堅く、ごわごわし
ている。
新潟県上越市 イセグリーンによる有機肥料栽培
表面がざらざらがはっきりわかる 鎌で刈るとシャキンと音がする
完全有機肥料イセグリーンがイネの茎葉に及ぼす影響
B.穂
イセグリーン施用区の稲の穂はなびき美しい熟色を示していたが、化学肥料区はところどころ倒伏し、熟色が悪く、穂イモチに犯されていた。
化学肥料施用区 イセグリーン施用区
完全有機肥料イセグリーンがイネの茎葉に及ぼす影響

現在、家畜に無秩序に投与されている抗生物質は、人間の使用量の2倍といわれ、約80%の家畜が抗生物質が効かない耐性菌に犯されているというのです。農水省では、今その対策を急いでいるとのことです。
 さて、BTNの獣医師が抗生物質を与えなくても健康に育つ鶏の飼料に添加した、細菌、乳酸菌、酵母菌などの有用菌の混合微生物の働きは、病原菌の外部からの侵入を阻止し、鶏の体内浄化と健康維持のためといわれています。この微生物の働きが、偶然水田土壌中でイネの根の健全化し、健康で良品質の米を育てたのです。

上越市 イセグリーン有機肥料区 化成肥料区
イセグリーン有機米の品質(新潟県 板倉町)

 鶏糞の悪臭のもとである硫化水素やアンモニアを抑え、溶存酸素量を高める微生物の働きが、イネの根の健全化に役立ったのです。私はこの事実から、動物でも植物でも、生物には共通する何かがあるのだということを学びました。微生物万歳です。
私はこの完全有機肥料イセグリーンによるイネの有機栽培に、確かな自信と夢が湧いてきました。それは、私が50年に亘るイネの研究、とくに15年間根に集中し、米作日本一のイネの根、北海道から沖縄まで排水不良田や老朽化水田のイネの根を掘って歩いたことが、いま生かされ無駄ではなかったことが嬉しいのです。
 完全有機肥料イセグリーンはイネの根を確かに健全化します。イネ作りは根作り、根作りは土作りです。イセグリーンは土作りによっておいしい米を作るのです。


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■ 21世紀のバイオ時代におけるBLCSイセグリーンによる環境保全型農業
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