【完全有機肥料「イセグリーン」による米栽培(太田保夫氏著)より抜粋】
■ 21世紀のバイオ時代におけるBLCSイセグリーンによる環境保全型農業
最近有機農業とか無農薬栽培が食の安心・安全面から注目されています。しかし、専業農家のレベルまで規模を拡大しても、そんな経営ができるのかという疑問がもたれます。さて、これから述べるイセグリーンは、その疑問を晴らし、脱化学肥料・減農薬農業の夢を大きく開きます。
1.完全有機肥料イセグリーンと、イネの根の成育
 根が深く張っていれば葉は当然のようによりよく茂り、素晴らしい稔りが期待されます。根を深く張らせるには、まず土作りが大切です。土壌環境を根が伸びやすいように整えることです。土の三相、固相、水相、気相を1:1:1に近づけ、土壌の団粒構造の形成を促進させることです。土壌団粒構造の形成には有機物肥料の投与が必須です。土壌団粒化が進むと、土が膨軟化し、保水力や保肥力が高まります。いわゆる地力が高まるのです。
 イセグリーンは、土壌の団粒化を促進しその地力を高めるのです。地力の高い土壌では、根は健全で深く伸びます。とくにイセグリーンを与えると植物ホルモンのエチレンの働きにより分岐根もよく発生して、養水分の吸収力が強く、地上部の生育も健全になるのです。
 人間にたとえれば、イネの根は養分を吸収する胃袋です。人間も後半生は胃腸の丈夫さで、その人の人生が左右されます。イネも同様に生育後半に根が健全であるか否かで生産量や品質が決まります。イセグリーンに含まれる微生物は鶏の胃袋の健康とイネの根の健全化に役立っているのです。
2.BLCSイセグリーンとイネの活力
 さて、イセグリーン施用田のイネの根は、観察した限り全て同様な反応を示していました。その共通点は黒化根が無く、赤褐色を呈し分岐根がよく発生し、古い根を含めて健全であったことです。
 イネの根は、湛水土壌中で生育するので、土壌の還元に耐えるため、空気を通す通路があります。通気系組織と呼ばれています。根は生きる為に呼吸をしますが、その呼吸に必要な酸素が地上部から送られてくるのです。従ってイネの根はこの空気系組織を利用して、酸素不足の還元条件で生きていくことができるのです。余談ですが蓮根の穴も通気系組織です。
 さて、夏季の急激な気温の上昇は、土壌の異常還元をひき起こし、イネの根は通気系組織から充分な酸素が補えなくなります。やがて根は機能を失い根ぐされを起こします。それを防ぐ為に、梅雨明けには土用干しといって、水田の水を落とし、土壌還元を防いだり、早朝冷水をかけて気温の上昇を抑えます。
 このイセグリーンには、いろいろな有用微生物が含まれています。まず、水田土壌中で光合成細菌の働きによって植物性プランクトン珪藻や緑藻が増え、水中溶存酸素が高まります。次に枯草菌、硫黄気化及び還元細菌、光合成細菌などの働きにより硫化水素の発生に関わる嫌気性菌を抑え、硫化水素の発生を抑えます。さらに、硝化細菌によってアンモニアの分解が促進されます。
 イセグリーンに含まれるこれらの有用微生物の働きの中で、特に注目されるのが水田土壌中でイネの根に障害を与える呼吸阻害物質硫化水素の生成を抑えることです。イセグリーン施用田のすべてのイネの根が赤褐色を呈し健全であったのに対し、隣接する慣行田のイネの根は硫化水素によって黒化し、根ぐされを起こしていたのが悲劇的でした。
2.BLCSイセグリーンとイネの秋落ち
戦後、米不足して困っていたとき、米の増産にブレーキを掛けたのがイネの秋落ちと呼ばれる生理的障害でした。イネの秋落ちというのは栄養生長期間の生育は良いのですが、生殖成長期に入ると、生育が急にみすぼらしくなり、稔りが悪くなる現象です。
その原因は、土壌中の硫化水素などの有害物質によって、根ぐされを起こし、養分吸収が低下することによるのです。とくにケイ酸、カリ、マンガンなどの吸収が阻害され、秋落ちが発生するといわれております。
湛水土壌中では、土壌の還元に伴い硫化物が還元され、植物にとって呼吸阻害物質である硫化水素が生成されるのです。また、鉄も3価鉄から2価鉄に還元され、根に障害を与えます。イネの根は、これらの還元物質の障害を避けるのに、地上部から通気系組織を通って送られてくる酸素を使って2価鉄を3価鉄に変え、根の表面を鎧のように覆うのです。イネの根が赤褐色を呈するのは、3価鉄のせいです。この3価鉄の鎧は、有害物質を硫化水素を受け止め、酸化して無害な硫化鉄に変えるのです。
つまり、イネの根が黒化していることは、湛水土壌中で硫化水素が生成されている証拠なのです。イセグリーンを施用すると根が赤褐色を呈し、黒色根がみられませんが、これは硫化水素の生成が抑えられていることの証拠です。化学肥料万能時代が長く続き、イネに秋落ちと思われる現象が起きています。このイセグリーンは、その救世主としての役割を果たしてくれることでしょう。
3.BLCSイセグリーンと植物ホルモンのエチレン
イセグリーンは、水田土壌中でアンモニアを分解、さらに有機物を分解し、植物ホルモンのエチレン生成を増大します。このエチレンは植物の生理作用を活性化し、植物の生育にもさまざまな影響を与えます。
まず、播種後種子中のアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどの酵素作用を促進させ、胚乳の養分を胚中に送り、幼葉や幼根の成長を促進します。さらに、幼根の分岐や根毛の発生を促進し、土壌中の養水分の吸収を促進させます。つまり、初期成育が促進されるのです。
つぎに、エチレンの生理作用として、注目されるのことは、倒状しやすいコシヒカリの茎を固くし、倒れし難くすることです。倒状した水田を見ると、不思議なことに畔ぎわの一列は倒れません。その理由は、畔ぎわのイネには直接風が当たり、その刺激によってエチレンの生成量が高まるからです。イセグリーンがイネの茎や葉を堅くするのは、エチレン生成を高めることによる組織の木化促進によるものです。生育後期まで根が健全で、吸収されるケイ酸が多く、茎や葉を固くします。両々相まって、イネは,しっかり育つのです。
さらに、エチレンは登熟ホルモンとも呼ばれ、作物の登熟を促進します。イセグリーン施用田のイネの登熟がよいのは、このエチレン作用と、根から吸収されるケイ酸とカリが茎葉から穂への炭水化物の転流を促進するからです。イセグリーン施用田のイネの品質が高いのは、イセグリーンが生成するエチレンと根の健全化によるのです。
なおイセグリーン施用田のイネは、エチレン生成が持続的に促進され、抗菌物質である酸化エチレンを生成し、病気にかかり難いのです。実際に、冷害年においても、慣行の水田では、農薬を散布しているにも拘らず穂イモチが発生していましたが、農薬を散布していないイセグリーン施用田のイネの穂には、イモチの発生はみられませんでした。この事実はイセグリーンが、減農薬の可能性を強く示唆しているのです。

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■ BLCSイセグリーンによる脱化学肥料・減農薬の有機の郷づくり
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